売れるお店はここが違う -
店長が自分でする店舗診断(第9回)
著者プロフィール 角田誠(つのだまこと) 日本商業施設学会会員、商業施設士、商業施設活性化コンサルタント、一級建築士、(協)日本店装チェーン監事、(社)商業施設技術者・団体連合会関東甲信越支部副支部長 商業施設の企画、設計、施工などを多く手掛ける。ベーカリー百数十店の店づくりに携わる。「江東区魅力ある個店づくり」制度に派遣される。 株式会社第一店装代表取締役、武蔵工業大学卒業 http://www.dai1-t.com
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第5章 商品管理診断
■「ストア・コンパリゾン」のすすめ 店舗診断を進めていく上で、最も注意しなければいけない点は、「お客様の視点で判断する」ということです。そのための方策として、「自分のお店を写真撮影して、それを見ること」を提案しました(第2回参照)。 自分のお店を客観的に見るために有効なもう一つの方策が、ストア・コンパリゾン(店舗比較見学、競合店視察)です。つまり、同業種の他店を視察して、自店と比較するのです。実際に足を運ぶことで、品揃えや価格はもちろん、陳列方法、ディスプレイ、クリンネス、サービスなどを比較検討できます。 お客様は、数多いベーカリーのなかから、自分のお気に入りのお店を選びます。あなたのお店が選ばれるためには、ライバル店に勝つ魅力を提供しつづけるしかありません。地域一番店は、周辺のまちのお店を見ています。日本で指折りのお店は、海外のお店を見ているはずです。「私の店のやり方がある、他店は気にしない」ではいけません。 ストア・コンパリゾンをするときに気をつけたいのは、一度にたくさんの情報を得ようとしないことです。事前に見たいポイントを絞って視察します。その上で、アンテナをめぐらして、そのお店の長所を探ります。 ストア・コンパリゾンは、他のお店のあら探しではありません。そのお店のよいところを見ます。「大した店ではなかった」という見方は、見る人の感度が鈍いことを表していることが多いものです。商売繁盛の奇策を探すのではなく、自分の中の平均的な成功法則を広げていく着眼点が大切です。 他店を鏡として、自分のお店の問題点を解く糸口にしましょう。 今回は、「商品管理診断」を行います。 お客様の「欲しい商品」を「欲しい時」に「欲しいだけ」提供するというのが「商品管理」です。その「商品管理」を徹底することで、お客様の満足と売上アップの両立が望めます。
夏のトマトフェア(モンタボー木場店) |
トマトフェアのチラシ(モンタボー木場店) |
■思わず手を伸ばしたくなる商品 (1)季節のおすすめ商品 日本人は、四季の変化に敏感だ、といわれます。そして、季節感の楽しみかたは、食生活を通じてというのが一般的です。 「季節のおすすめ商品」は、そのようなニーズに応えます。「季節限定」とうたいながら、希少価値をアピールすることにより、お客様の購買意欲を刺激します。 季節商品は、「早出し、早売り」が基本です。季節のまだ浅いうちから展開して、その商品を見ることで、お客様に季節を感じていただくのが狙いです。その時期に、売れ筋商品を読み取り、ピーク時の売上アップにつなげます。 ○春、「春いちごフェスタ」。 ○夏、「トマトフェア」(写真) ○秋、「マロンまつり」 ○冬、「Xmas創作パンフェア」 などの企画を行い、季節限定の商品を提供します。それらのなかから人気の高いものを、定番商品や売れ筋商品へピックアップすることを考えます。 (2)新商品の開発 新商品の開発を定期的に行うことは、長く愛され続ける店であるために不可欠です。 お客様は浮気なものなので、新しい動きを感じ取れないお店からは、足が遠のきます。新商品の開発は、相当の時間と労力が必要ですが、1カ月〜2カ月に1回くらいのペースで新商品を提供したいものです。 新商品のご案内は、その1週間くらい前から、POPでご案内するのが有効です。その場合、レジ周りやレジバックでご案内するのが効果的です。レジ待ちの時間は、唯一お客様が退屈な時間です。思わず目に入った新商品情報は、次回の来店を促します。 実際に新商品を陳列するときには、POPを新商品の近くや店頭に掲げ、アピールします。 新商品の陳列では、パンの断面を見せたり、試食を積極的に行ったりと、お客様にパンの魅力を訴えます(第6回参照)。 (3)魅力を高める「ネーミング」 商品の「ネーミング」の工夫で、パンの魅力を高めることができます。 ○食材に季節名を入れる。「春野菜の ピザ」 ○食感を表現する。「カリカリベーコンフランス」 ○地名を盛り込む。「浅草カツレツパン」 ○特長をストレートに表す。「具だくさんカレーパン」
?1 季節のおすすめ品やフェアを展開しているか。 ?2 定期的に新商品を開発しているか。 ?3 ネーミングの工夫をしているか。 ?4 食パンで地域一番店となっているか。 ?5 食パンの売り方のバラエティーがあって、買いやすいか。 ?6 売れ筋商品の焼成回数は十分か。品切れはないか。 ?7 閉店2時間前まで焼きたてを出しているか。 ?8 予約を受けているか。わかりやすくその案内をしているか。 ?9 商品のチェックを厳しく行っているか。スタッフ全員が行っているか。 ?10 販売スタッフが日頃から商品知識を得る努力をしているか。 |
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■食パンを看板商品にする お客様の来店回数を上げるためには、「食パン」を人気商品にすることが大事です。 食パンはそのお店を代表する「顔」です。お店の固定客になっていただくためには、毎日食卓にあがる食パンのファンになってもらいます。 お客様は、選択性の高い菓子パンなどは、さまざまなお店で買いくらべをします。 しかし、食パンはお気に入りのお店で目的買いすることが多いものです。 食パンがお店の売れ筋商品になるようにします。 食パンの提供の仕方も工夫します。一斤売りのほか、少ない量で包装したり、さまざまな厚さ(4枚〜12枚)のスライスをしたりして提供します。 スーパーやコンビニの棚パンとは、味の違いだけではなく、売り方の違いも明確にします。
■常に焼きたてを出す オーブンフレッシュベーカリーの醍醐味は、オーブンから出たばかりの焼きたてパンにあります。 そのおいしさと感動を、開店から閉店までのすべてのお客様に提供したいものです。 売れ筋商品の焼成は一日に数回行い、品切れをおこさないようにしながら、焼きたてを出します。 また、夕方のピーク時15時〜17時に焼きたてを提供できるシフトを組むようにしたいものです。 朝から昼までに、製造を完了してしまうと、夕方に来店されたお客様にとっては、魅力の少ない品揃えになってしまいます。 「焼きたての商品が少ない」→「客数が減り夕方の売上がとれない」→「夕方の焼成をやめる」という悪循環から脱却しなければいけません。 お客様は、間違いなく、夕方まで焼きたてを提供してくれる店を、望んでいます。 商品の予約(取り置き)を受けることも、お客様によろこばれます。電話などでの予約を受けることを、店内でわかりやすくインフォメーションします。レシートに、お店の電話番号とその旨をプリントするのも有効です。 「欲しい商品」を「欲しい時」に「欲しいだけ」提供します。それが、お客様に支持され、繁盛するお店となる結果につながります。
■商品のチェックは全員でいつでも 商品のチェックは、厨房から品出しするときに製造担当者が行います。 それとは別に、販売スタッフは、陳列時に商品チェックを行うことも必要です。形、大きさ、焼き色など、お客様に出す直前に商品のチェックをします。規準にそぐわない商品は陳列せずに、製造担当者に何が問題かを伝えて返品します。 販売スタッフは、お客様に直接パンをお渡しする仕事ですから、「良いパンを提供する」という信念を持って判断します。 このことは、店長をはじめ全員のスタッフが徹底します。 そのために、販売スタッフは日ごろから商品知識を身につけるように心がけます。
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