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記事の閲覧 - 店長が自分でする店舗診断(2005年12月号)
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売れるお店はここが違う - 店長が自分でする店舗診断(第7回)

著者プロフィール
角田誠(つのだまこと)
日本商業施設学会会員、商業施設士、商業施設活性化コンサルタント、一級建築士、(協)日本店装チェーン監事、(社)商業施設技術者・団体連合会関東甲信越支部副支部長
商業施設の企画、設計、施工などを多く手掛ける。ベーカリー百数十店の店づくりに携わる。「江東区魅力ある個店づくり」制度に派遣される。
株式会社第一店装代表取締役、武蔵工業大学卒業 http://www.dai1-t.com

第4章 什器及び陳列診断(中編)

■トング、セルフトレーの選び方
 今回は、陳列を生かすための什器や備品について診断をします。
 お客様の使うトングには、色・材質などの違うさまざまなものがあります。どのトングが良いかは、実際に商品をはさんで使用してみてから決めます。
 次に、洗浄方法がトングの材質に合っているかの注意も必要です。洗浄器などで高温洗いする場合は、「アクリル樹脂」や「アルミめっき仕上げ」のものは適しません。「めっき仕上げ」のものは、酸やアルカリで変質しやすいので避けたほうがよいでしょう。
 セルフトレーは清潔感のあるプラスチック製品がよく使われます。現在は、強度があり、耐熱性にもすぐれる「FRP製」が主流となっています。
 セルフトレーに小さいものを選んでしまうと、すぐにトレーが商品でいっぱいになってしまいます。客単価が上がらない原因にもなります。セルフトレーは大きめのものを選びます。手に持ちやすい「ウェー
ブ型」のトレーは、ふちが高くパンをたくさん載せても落ちにくいので、たいへん好評です(写真1)。
 トングやセルフトレーは、お客様が直接手を触れるものですから、ていねいに手入れをします。変形したものや傷ついて汚れがとれにくいものは使用しません(第5回参照)。

■販売トレーやかごはパンにあわせる

写真1 人気上昇中のウェーブ型セルフトレー(よし与工房製)

写真2 自然な素材の柳すのこ(よし与工房製)

 商品を陳列する販売トレーは、「木製」「金属製」「プラスチック製」などさまざまなものがあります。基本として多く使うトレーのほかに、商品によってトレーに変化をつけてそれぞれのパンの特長をきわだたせます。あんぱんは「木製ばんじゅう」、生菓子は「金属」や「メラミン樹脂」トレー、揚げパンは「ステンレスメッシュ」などを用います。
 「かご」や「すのこ」は、適度に水分を吸収し、蒸発させる「籐製」のものが、天然素材の良さもあり、パンの魅力を引き立てます。その他、ハード系のパンや田舎パンは、「柳」の「すのこ」を使用することで、粗くざっくりしたイメージを演出することができます(写真2)。
 また、「かご」や「すのこ」の中敷に、カラーナプキンや麻ナプキンを敷くと、パンがはえて見えます。

■店頭テーブルはトップセールスゾーン
 店頭にスペースがあれば、テーブルや平台を置くことをおすすめします。
 店頭テーブルは、もっとも興味深く魅力のある商品を展示します(第3回参照)。 他のパン棚よりも大きなプライスカードやPOPを使用しておすすめ感を演出します。ボリューム陳列をしたり、試食提供を積極的に行ったりします。
 「最も売れやすいエリア」を「おすすめ商品」で「魅力的な陳列」にすることで売り場のなかのトップセールスゾーンにします。
 売上を伸ばすには、売れにくいものを売るように努力するよりも、売れるものをもっとたくさん売ることの方が、簡単で確実です。

?11 トングは使いやすいか。セルフトレーが小さくないか。
?12 陳列用の販売トレーや籐かごは清潔で手入れをしているか。
?13 店頭におすすめ品を展開しているか。陳列に「おすすめ感」「ボリューム感」があるか。
?14 パン棚のデザインはお店全体にあっているか。
?15 棚の前の方を照らしているか。通路面にも照明があるか。
?16 棚下照明の光源色の選択はよいか。
?17 おすすめ商品や新製品だけでなく、定番商品も試食を行っているか
?18 レジ周辺で「ついで買い」を展開しているか。
?19 安全のため、スライサー作業スペースはメイン動線と重なっていないか。
?20 店内作業中もお客様の動きをチェックできるか。



■パン棚の魅力と棚下照明
 パン棚のデザインは、主役のパンの魅力を生かすことが大事です。お店全体のデザインをベースとしたパン棚にします。どんなによい材質や形のよいパン棚でもお店の雰囲気に合っていないと、お店は落ち着かない空間になってしまいます。
 パン棚には、各段に棚下照明(スリムライン)をつけて商品を明るく見せます。大手スーパーの食品売り場の中でも「棚パン」にだけは必ずといっていいほど棚下照明がついています。おいしくパンを見せるためには、この棚下照明が重要です。
 棚下照明は、棚の前の方に取り付けます。実際にお客様が目にするパンに最も効果的なあかりをあてます。店外通路に面したパン棚は、前方と後方の2列に配置して、お店の外を歩かれる方に対しても、パンが魅力的に見えるように配慮します。この場合、棚下照明のランプは、直接お客様の目に入らないようにカバーをします。ランプのまぶしさだけが目に入り、大事なパンが目立たなくなっては逆効果となってしまいます。
 棚下照明に使われるスリムラインには、光源色の違いによりさまざまな種類のランプがあります。どのランプがよいのでしょうか。80年代までは、白色W(色温度4200K※数字が大きいほうが冷たい色)しか使われませんでした。90年代に入り、暖かい光のEX-L電球色(2800K)が主流になりました。私がおすすめするのは、暖かいながらも自然光に近い温白色EX-WW(3500K)です。以前は受注生産でしたが現在は各メーカーで既製品化(短納期化)されています。自分の店以外にも、よい光でパンを見せているお店がありましたらチェックしてみてください。

■お客様に支持される「試食」を
 ほとんどのお店は、新製品やおすすめ品で「試食」を行っています。「試食」は、幅広く積極的に行いたいものです。お客様は、どのパンを選ぶかを楽しみに来店されますが、その結果として、いつも選んでいる商品を買っていくことが多いものです。これは、「おいしそうで食べてみたいパン」と「実際に買うパン」の間に差があるからです。その差を埋めるために「試食」を活用します。
 ですからよく売れているパンこそ、「当店の人気?○」と明示して、試食を行います。ここでも今売れているパンの売上を伸ばすことを目指します。
 さらに「店内のすべての商品をご試食できます」というお店ならば、お客様に必ず支持されるはずです。

■「ついで買い」で売上を伸ばす
 「ついで買い」という考え方があります。常連のお客様の客単価をアップさせるには、来店目的の商品以外にどれだけ手を伸ばしていただくかが大切です。「ついで買い」を増やします。
 レジ周辺の「プラスワン商品」は、「ついで買い」を増やすために効果的です。すでに、レジ周りで「プラスワン商品」を展開しているお店の方ならば、この場所が面積あたりの売上効率が高いことがわかるはずです。
 「プラスワン商品」には、お店でつくられた焼き菓子などがベストですが、関連の仕入れ商品なども有効です。
 また、お店としてテコ入れしたい「主力商品」をもう一度レジ前で展開することでその単品の売上を上げることができます。
 しかし、いわゆる「ショック療法」ですから、短期で効果をあげて、元に戻してあげることで客動線の混乱を防ぎます。

■店内のお客様がいつも見えていますか
 店内の作業は接客作業のほかに、スライス作業やトレー拭きなどさまざまな作業があります。什器の配置で注意したいのは、これらの作業をしている間、お客様に背を向けないようにすることです。
 お客様のなかには、スタッフに何かたずねたい方やお困りの方がいます。そればかりではなくスタッフにとってはお客様の動きに常に注意を払い、お客様の望むところに気を配らなければなりません。
 スライサーの位置は、作業性、安全性を確保しながら、お客様の動きが目に入る場所にしましょう。


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